この胸が痛むのは
アールを連れて、殿下が来られました。
この前会った時から今日までのお話をしてくだ
さいました。
リヨンの王女様の事故があり、王太子殿下と
ガーランドへ行かれていた事は父からも聞いて
いました。

夜会に出席されていた王女殿下がお帰りになる
途中で、海で遭難されたと説明されたので、
『その方がクジラと言われていた王女様なのですか?』と、尋ねたら。
殿下のお顔から微笑みが消えて、しばらく黙ってしまわれたので。

しまった、と思いました。
畏れ多くも、リヨンの王女殿下にクジラだなんてなんて無礼な事を言ってしまったのでしょう。
殿下はお気を悪くされたのだと思いました。


「フォンティーヌ王女の事は、いつか君には
話さなくてはいけないと思っているんだけど……
 恥ずかしくて愚かな私の話だ。
 何も、姉上からは聞いていない?」

殿下が仰る意味はわかりませんが、クラリスからは何も。
何ひとつ聞かされていない。
あの、貴方が姉に渡した……


「ブレスレット……」

思わず、呟いていました。

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