この胸が痛むのは
「ブレスレット? あぁ、あれか……
 侯爵に取り上げられたんだって?」

殿下はとても楽しそうに笑っていらっしゃいました。
姉の話をすると、本当に楽しそうにされるのね。


「……姉からお聞きになりましたか?」

「渡したくなくて抵抗したけど、駄目だった、
ってね。
 夜会の翌日には王妃陛下に侯爵が返しに来たしね。
 王妃陛下は返さなくてもいい、と仰せだったけれど、君のお父上はそういうところをきっちりされたい方だからなぁ」


姉との仲は王妃陛下も公認されていると、いう事なのだと、改めて知りました。

もうこれで、決まった。
アシュフォード殿下とクラリスは結ばれる。



「アグネス、どうしたの?
 今日はあまり話さないね?」

お優しい殿下が私にお尋ねになります。
私達の目の前では、兄のプレストンが投げた
ボールをバックスが追いかけて、その後ろを
アールと元4号のルビーが楽しそうに駆けて
います。


殿下とふたりきりは嫌だったので、兄に同席してと無理矢理頼み込んだ私でした。
当然、その前には姉にも頼んだのですけれど。


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