この胸が痛むのは
初等部3年生が終了して、9月に新学年が始まる前の長い夏休みに入りました。

案の定、母からは反対され、父からは黙認され、兄からは『吸血鬼に襲われたら、これを掛けろ』と、正体のわからない液体の入った小瓶を渡され脅されて。
そして何故だか元気になった姉からは
『出来るだけトルラキアの情報を集めて、教えてね』なんて言われて。
私は祖母とトルラキアを旅していました。


母国バロウズから長い長い馬車の旅でした。
祖母と私とお世話役と、護衛で1台。
もう1台の馬車には2人の下男とメイドが乗ってバロウズからの総勢7名、馬車2台の旅はトルラキア国内入ってガイドの若い男性を加えて、早くも2週目に突入していました。

トルラキアの西側には高くそびえるクロフツ山脈が連なり、有名な黒い森が何処までも続きます。
領土を侵略しようとする外敵との戦いがずっと続いていたと、ストロノーヴァ先生から教えていただきました。

クロフツ山脈は秋が深まると積雪するので、他国が攻め込むのは、雪解けが始まる春の始めから秋にかけてで、昔なら今の時期は戦闘中なのでしょう。


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