この胸が痛むのは
「アグネスお嬢様の御髪はとても綺麗な金色ですね。
 この国に来られるのが3年後だったなら、ヴァンパイアに拐われて花嫁にされていたかと知れません」

微妙に間違ったバロウズ語で、冗談を言ったガイドのシュトウブさんに注意したのは、祖母のお世話役のベイシス夫人です。


「お嬢様はまだ9歳ですよ、つまらない軽口は
お止めなさい」

「そ、そうですか!
 ごめんなさい、もう言いません」

慌てて謝るガイドさんに祖母は笑いました。


「いいわよ、謝らなくて。
 確かにこの国では、アグネスの金髪は目立つわね?」


祖母が仰った様に、トルラキアに来てからは金髪の方は少ないな、と私も思っていました。
こちらでよく見かけるのは、黒髪や濃茶の髪色。
目の色は先生のような赤は少ないのか、今のところは全然居なくて、大抵の人は黒か茶色の瞳でした。
肌の色は青みのある白さで、身長は高め。
私達はこの国では、周囲より健康的に見えました。
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