この胸が痛むのは
そういう質なのです。
近ければ近い程、心を見せられなくなる。
リーエが異国の少女だからこそ、私は私の恋を打ち明けられた。


「本当におかしいね? どうしてお父さんは
フォード様にじゃなくて、お母さんに返すの?」

「……フォード様はまだ学生だから、自分で買えなくて、お母さんが買ったんだと思うの。
 だから彼のお母さんも、姉と付き合うことを
賛成してるんだよ」

「でも。手紙には違うよ、って書いてたんでしょ?
 お母さんが勝手にお姉さんにあげたんじゃないの?」

王妃陛下がブレスレットを勝手に?
そんな事は考えても居ませんでした。


「あきらめるのは、フォード様にちゃんと聞いてからだよ」

齢12の、4歳から恋の遍歴を重ねてきた彼女は
厳かに言いました。
彼女の現在進行形の彼は、友達のお兄さんで
4歳上の16歳のパエルさん。
フォード様も同じ16歳なの、と伝えてから。
リーエは私の初恋を成就させてあげたい、と他人事ではなくなっていたのです。

殿下ご本人に、確認する?
そんな事が私に出来るのでしょうか?
ブレスレットの事だけ、なら……出来るかも…… 

殿下にお会いしてから2ヶ月近くが経っていました。
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