この胸が痛むのは
「せっかく、大勢の人を貸し出して貰ったのに、何も無くて無駄に終わって申し訳なかった……
です」
 

侯爵にガツンとされてから、言葉遣いに迷う。
語尾にです、なんて小さな声で付け加えてしまった。
王族とは言え、第3くらいで偉そうに言うのも、とか、思って。


「殿下、何事も無くて謝るのはお止めください。
 何事かあった方が問題なのですから、無いのが一番なのですよ。
 警戒が無駄に終わる為の警備なのですから」


侯爵が言ってることは当然で、注意されているだけなのに、叱られているように感じるのは何故なんだ。
アグネスと結婚出来たら、将来の舅となるお人だ。
もう少し馴染まなくては……いちいち怯えていては駄目だ。


「それで」

ん? それで? 何だ?


「それで、殿下はご自分の力になるものを何になさるのか、見つけられたのですか?」 

「……」

「王太子殿下の即位後には、殿下は公爵となり、兄上の治世を支えられると、仰られた。
 だが、今のままでは『同腹である』と言う事でしか、その存在に価値は無いのでは?」

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