この胸が痛むのは
手前の配架エリアから順にストロノーヴァの姿を探していく。
小説と掲示されている書架が並んだ箇所には中等部と高等部の幾人もの生徒達が居て、通りすがりに見るだけでは人物を判別出来ないのだが、この辺りにはいないと思う。

進む程に人は少なくなってきて、今日は来ていないのかな、と思って、最後からひとつ手前を覗いたら。  
直接床に座って読書に没頭しているストロノーヴァが居た。


図書室では私語厳禁だと聞いていたが、ひとり静かに読む生徒よりも、友人と連れ立ってきている人間の方が多くて、今日の図書室内は少し賑やかだった。
図書委員もそれに対して、うるさく注意する事も無かった。

だが、奥まったここにはストロノーヴァしか居なくて。
(厳密に言うと、夏休みの課題に必要なのか、本の背表紙を眺めていた上級生らしき男子生徒が居たが、俺に気付くと頭を下げて行ってしまった)

声をどうかけるか、考えていたのに。
静かすぎるこの場で……


「殿下、そこでずっと立っておられると、気が散ります。
 私にご用があるのでしたら、お伺い致します」


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