この胸が痛むのは
本の世界に入り込んでいたと思っていたのに。
ストロノーヴァは顔を上げて、読んでいた本を静かに閉じた。
◇◇◇
「アグネス・スローン嬢……
夏にトルラキアへ行くと言うので、助けになればと母国について説明などはしていますが。
……失礼ながら、殿下は姉のクラリス嬢とお付き合いをされていると、聞いておりました」
そうか……噂は生徒だけでなく、教師の間にも広がっているんだな。
そんな噂が流れているのは、知っている。
夜会に向けて、仲の良さを周知させる為に一緒に昼食もとった。
だが必ずレイを加えて、ふたりきりにはならないようにしていた。
無責任にリヨンの王女の噂を流した俺が、今度は噂される方になっていて。
『そんな関係ではない』と、レイとクラリスが周囲に言ってくれていたが、誰も俺には直接聞かない。
否定したくても、そんな環境を作ってきたのは俺自身で、レイ以外とは親しくしていなかったからだ。
「私とクラリス・スローン侯爵令嬢とは、その様な関係ではないのです」
ストロノーヴァは顔を上げて、読んでいた本を静かに閉じた。
◇◇◇
「アグネス・スローン嬢……
夏にトルラキアへ行くと言うので、助けになればと母国について説明などはしていますが。
……失礼ながら、殿下は姉のクラリス嬢とお付き合いをされていると、聞いておりました」
そうか……噂は生徒だけでなく、教師の間にも広がっているんだな。
そんな噂が流れているのは、知っている。
夜会に向けて、仲の良さを周知させる為に一緒に昼食もとった。
だが必ずレイを加えて、ふたりきりにはならないようにしていた。
無責任にリヨンの王女の噂を流した俺が、今度は噂される方になっていて。
『そんな関係ではない』と、レイとクラリスが周囲に言ってくれていたが、誰も俺には直接聞かない。
否定したくても、そんな環境を作ってきたのは俺自身で、レイ以外とは親しくしていなかったからだ。
「私とクラリス・スローン侯爵令嬢とは、その様な関係ではないのです」