この胸が痛むのは
『そうなんですね』と、あっさりとストロノーヴァは俺の言葉を受け入れた。
彼の、どちらでも構わないと言いたげな様子に
クラリスの恋路も前途多難に見えた。


「あの、それで……」

「私は教師失格なんでしょうけれど」

ここでもまた、俺の言葉は遮られて。
ストロノーヴァが立ち上がった。


「バージニア王女殿下が気に入らない女生徒を、奥に連れ込んで、皆で泣かせている事は以前から知っていました」


バージニアがお茶会に招いた令嬢に、取り巻きを使って些細な意地悪をしている事には、うっすらと気付いていたが、まさか学園でもそんな真似をしているとは思ってもいなかった。


「頻繁にではありませんが、そういう事をしているなとは、ここからでもわかりますから」

ストロノーヴァが今居る場所より奥の方向を、
くいくいと指差す。
一番奥の、誰も来ないような専門書が並ぶエリアで、アイツはそんな事を繰り返していたのか。



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