この胸が痛むのは
俺は自分が囲い込もうとしていた事を棚に上げて、非常にムカついた。


「お相手は22歳の次期辺境伯のジョセフ・バーモント様。
 お母様のバーモント伯爵夫人のたってのご希望です」

ち、ちょっと待て、ジョセフ・バーモントって、有名な……


「それ、あれだろ? 初恋を貫く男だろ」

俺の代わりにレイが言う。
その通り、バーモント辺境伯家嫡男のジョセフは初恋を貫く男として社交界で有名な男だ。

5歳上の初恋の女性が夫と死別した後、即行で
迎え入れて恋人に収まった。
そしてそのまま領地に戻らず、王都のタウンハウスに愛の巣を構えて、初恋の相手を溺愛しているのを知らない貴族は居ない。

辺境伯家には子供はジョセフひとりしかおらず、恋に狂っている以外は出来がよい男なので、廃嫡はされなかった。
だが、名家の次期辺境伯夫人にその女性では……と、周囲は反対だった。


勿論、両親も家臣も皆でジョセフを説得しようとしたが、恋人と添い遂げられないなら辺境に戻らない、等とうそぶいて恋人と王都の生活を満喫している。
例の夜会でも、人目を気にせずジョセフは恋人とイチャついていた……そんな男と?


「アグネスが初等部を卒業した後、辺境へ引き取り、次代の辺境伯夫人に相応しい教育を与えて、バーモントの嫁に育てる、と」

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