この胸が痛むのは
「……」

「婚姻の予定は5~6年後。
 その間に自分の全てをアグネスに伝えたい、と仰って。
 他に子供も居ないので、実の娘のように可愛がるし、領民からの支持を得る為に領地視察や支援活動にも参加をさせる予定だそうです」


13で引き取られて18になったアグネスに、31のジョセフ。
現財務大臣の父を持ち、完璧に辺境伯夫人としての教育を受け、両親に可愛がられ、家臣、領民からも慕われる若く賢い新妻。
片や10年来の恋人は既に36歳、両親からも家臣からも受け入れられず、後ろ楯もない。
身体だって馴染んではいるが、新鮮味は無い。
それでも、初恋を貫き通せるのか?
その時が来たら、ジョセフはどちらを選ぶ?


「うわ、だから今、子供でもいいんだ」

うんざりしたように、レイが呟く。
子供でも、じゃない。
子供だから、いいんだ。
育て方次第で、どうとでも変わる。
はっきりした自我が無い内に、思い通りに教え込む。
「どうして?」「嫌だ」の疑問や拒否を、頭に浮かばせないように、優しく言葉巧みに誘導して。
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