この胸が痛むのは
クラリスから手紙が届いた。
封筒の中には絵葉書1枚だけが入っていた。


トルラキアからクラリスの元に届けられたアグネスの絵葉書。
王都グラニドゥのホテルに帰国まで滞在すると
綴られている。
俺には来なかったショックよりも、今アグネスが何処に居るのか判明して、その喜びの方が大きい。

クラリスがこれを俺に送ってくれたと言うことは、『行け』と言うことだ。
バーモントからの打診は断った、とそれだけは
侯爵から聞いていたが、あの国トルラキアには
得体の知れない何かが住んでいるからな。


アライアを至急呼び出し、俺が出席するような
国の行事がないか確認する。
理由を聞かれるが、答えない。
反対されるのがわかっている。
トルラキアへの旅券や準備を全部済ませてから
告げるつもりだ。

登校日の皆が帰った教室で、アライアへの口止めを誓わせてレイにトルラキアへ行く事を伝えた。
先日クラリスから聞いた話がずっと胸の辺りにつかえていて苦しい。
アグネスの本当の笑顔が見られるまで帰るつもりがないので、それだけを伝えようと思っていた。


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