この胸が痛むのは
私が殿下に手を引かれてホテルへ戻ると、フロントにはペテルさんとリーエが居ました。
リーエが私と殿下を見て、その目が繋いでる手を見て。
彼女が何か言いたくてムズムズしているのが、その目付きを見てわかりました。


「み、皆さん、皆様、サロンにいます。
 後でお茶、お、持って行く、行きます」

いつも、ゆっくりですが落ち着いて正しくバロウズの言葉を話すペテルさんが慌てていました。
殿下がふんわり微笑みながら手を上げたので、
ホッとしたように胸を押さえています。

それを見ていたら、そうだ、この御方は王子様
だったんだ、特別なひとなんだ、と改めて思い
ました。
私はさっき、水をかけてしまったけれど。


ペテルさんに案内されてサロンへ行こうとした
殿下の手を、私はほどきました。


「リーエと話をしたいので」

「わかった、後でね」

殿下の後ろ姿を見ていたら、リーエが私の隣に
来ました。


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