この胸が痛むのは
「私ね、この国がとても気に入ってしまったの。
 ですからね、是非夏の別荘を構えたいと思うの。
 そうなると、これから物件を探して、トルラキアとバロウズと両国からお許しを貰って、登録届けを出してと、しなくてはいけないことも多いでしょう?
 殿下が紹介状を書いて下さると仰せになっていてね。
 シュトウブさんと一緒にお城へ行って、担当の方に他国の者が住宅を購入するするにはトルラキアでは何が必要なのかを、聞きに行きたいの」

「でも、シュトウブさんがいなかったら……」

「リーエを案内に、ってペテルさんからお許しを貰いましたよ」

学校の授業があるのに、勝手に決めてリーエは
大丈夫なのかしら。
気になって隣を見ると、リーエはとても嬉しそうな顔をしていました。


「奥様、パエルを誘ってもよろしいでしょうか?」

「もちろん、いいわよ。
 よろしいですわね、殿下?」

殿下も頷いていらっしゃいました。
殿下とマーシャル様とリーエとパエルさんと私と4人の護衛騎士様。
直ぐに帰国されるかも、と思っていた殿下と街へ行けるなんて。 


姉を好きな殿下は悪魔なのに。
もう諦めると決めていたのに。
会いに来てくれて、優しくされたら。

私は胸が高鳴るのを押さえることが出来ませんでした。
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