この胸が痛むのは
「あ、あぁ王妃陛下から渡されたやつ。
 それがどうしたの? 次の日には君のお父上が返してきたよ?」

「殿下の瞳の色の宝石だった、と聞きました……
 やっぱり、殿下はクラリスの事を」

「え、えっ」

「私がいただいたお手紙には、嘘を書かれたのでしょう?」

「ちょ、ちょっと!」

殿下は凄くあわてていらして。
両手を大きく振られました。 


「嘘じゃない、嘘じゃないよ!
 クラリスとはそんなんじゃなくて!
 あぁーもう、そうか、あのね!」

焦って説明されようとして。
向かい席に座って、こちらを無表情に見ていた
護衛騎士様に再び仰いました。


「何も聞こえないな?」 

「何も聞こえておりません」

「俺は外が気になる」

「畏まりました」

殿下が気になると仰せなので、騎士様は外を警戒する事にしたようで、こちらを見るのは止められました。


「凄く恥ずかしい誤解をしてしまって、夜会にはパートナーが必要だった。
 手紙に書いていたように、アグネスがデビュタントしていたら、君に申し込んでいたよ。
 君の姉上に頼んだのは、クラリスには別に好きなひとがいて、そんな関係には絶対になりそうもないからだ」 

「……」

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