この胸が痛むのは
隣街に到着して。
もう1台の馬車から降りてこられたマーシャル様はリーエを通訳に、すっかりパエルさんと仲良くなられていらっしゃいました。

そこからは殿下も会話に参加されて。
皆様、同じ年齢なので打ち解けられるのも早くて、間に入るリーエは忙しそうでした。

護衛騎士様の内のお一人がトルラキアの言葉を
話されるようで、しばらくするとリーエが私の
手を取って、皆様の輪からふたりで外れました。


「リーエのお陰で皆が仲良くなれて、両方の言葉がわかる、って凄いね」

「アグネスもトルラキアの言葉を覚えてみる?」

「出来たら嬉しいけど、トルラキア語は難しいよね?」

バロウズ語とは言葉の順番が違うので、それが難しい気がしましたし、多く使われている『ヴ』の音はバロウズには無いもので……


「こっちの男の子と付き合えば、直ぐに覚えられるよ」

「え?」

思わぬ事を言われて、リーエを見ると。
彼女はキラキラした瞳で私をじっと見つめていました。


「フォード様みたいに綺麗じゃなくても、トルラキアの男の子は強くて優しくて、お勧めなの。
 帰国するまででいいから、その中でもパエルの次に上等な子を紹介するよ?」

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