この胸が痛むのは
「殿下、どの子犬にするか、決まりましたか?」

「そうだね、どの子にしようかな?」


前々から申し出られていた他の方達には、大変申し訳無かったのですが、やはりアシュフォード殿下には、どの子がいいかの優先権がございます。


「そうだなぁ……私も3男だし、他人とは思えないから、3号を私の子にしようかな」


殿下は3号を壊れ物を扱うように優しく抱き上げました。
貰おうとか、連れていこう、ではなくて。
私の子にしよう、と言っていただけたのが嬉しくて。


「お前、ウチに来たら、遠慮なんかしなくていいからな」


何度も繰り返してしまうのですが。
私はまだ9歳で、10歳のご令嬢からも邪魔なチビ扱いをされてしまうような。
誰が見ても、紛れもなく子供でした。

それなのに、大切そうに抱かれた3号を見ていると何だかモヤモヤしてきたのです。
その初めてのモヤモヤが、1人前にも嫉妬なのだと自覚したのは、もう少し大人になってからでした。

 
 ◇◇◇


それは次のご訪問の時。

「疲れるからだよ」

私からの質問に、アシュフォード殿下がまず仰られたお返事は、この一言でした。
私は子供特有の遠慮の無さで、ずけずけと尋ねたのです。


『学園では、あまりお友達を作らないのですか?』
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