この胸が痛むのは
私もリーエのように関係を結ぶ、役に立ちたい。
昨日帰りの馬車で、殿下は夢をお話しくださいました。
『外交』で、力をつけたいと。
将来、殿下の隣に立てるのなら。
お役に立つ為に、大人になるまでに色んな国の 言葉を学ぼう。

そう考えていた私は笑っていたのでしょう。


「じゃあ、先に帰るけれど。
 アグネスがちゃんと笑ってくれたから、安心したよ」

別れる時、殿下は少し嬉しそうにしてくださいました。
そう言って、今朝祖母が殿下からの組み紐を編み込んでくれた髪を一房取って、口付けてくれました。


『次に隣街で市が立つ時は、私も行きたいわ』と、祖母が言ったので、トルラキアを離れる前の最後の観光は出会い市に決まりました。

旅の終わりが見えてきて、リーエやシュトウブさん、皆さんとお別れなのだと思うと寂しくて。
でも、バロウズには殿下も家族も居ます。
母に対しては、今でも構えてしまいますが、姉とは久しぶりに向き合って、お話しをしたいと思いました。


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