この胸が痛むのは
それから続けられたのが。


「あそこでは私個人よりも、肩書きが優先されるだろう?
 学園では平等と言われているのに、誰も私を名前で呼ばない。
 教師も上級生も、皆が私を殿下と呼ぶ。
 兄上からは『お前は青い』と笑われたけれど。
 男子生徒に親しげにされると、進路の為。
 女子に近付かれると、何か父親から言われて、そうしているのかと、身構えてしまうんだ」


『王子という肩書きを、一番意識し過ぎている自分が嫌になる』
そう続けて仰ったのですが。
やはり、私には殿下の仰せになる事が、そこまで理解出来なくて。


「ごめんなさい、えーと、殿下は。
 私も殿下と呼ばない方が、いいのですか?」

もし、そうなのだと言われたら。
名前で呼んでもいいの?
そう聞きたくて、口がムズムズしました。


「アグネスから殿下と呼ばれても、特に何とも思わないなぁ。
 このまま殿下と呼んでくれてもいいよ」


アシュフォード様と、呼びたかったのに。
何だかおとなの女性みたいに。
ですから、殿下でいいよ、との返事にがっかりしました。


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