この胸が痛むのは
特に隠すつもりもないようだ。
しがらみもあっただろうに、国を出て研究資金を貯める為に働く事を実家に認めさせたんだ。 
実家の財力に頼らない事を条件に、認めさせたか。


「でも、ずっとついて回る、変えられないものです。
 殿下の瞳の色もそうでしょう、王族の色だ。
『それ』に助けられる事の方が多い。
 殿下の仰せになる肩書きとかってやつは、単なる記号だと思える日が来ますよ」

「……」

「他に呼び様がないから、そう呼べば間違いないから、理由はそれぞれですが。
 好きなように呼んでくれて構わない、そう思う日が来ます。
 ……これからは特別なひとに呼んで貰いたい名前にだけ、拘ればいいんだと、私は思いますね」


俺はずっと『殿下』が重荷で。
ひとり拘って空回りしてた。


『何を聞かされても、噂なんか信じません。
私は貴方が語る言葉と、自分自身の目で見た貴方の姿だけを信じます』

『殿下と仲良くなりたい御方はたくさんいらっしゃいます。
これからどんどん仲良しを作ればいいのです』

俺を信じてくれるアグネスの言葉に後押しされる。
今からでも、向けられる友情は素直に受け取ろう。
徐々にでも、胡散臭い王子スマイルとはお別れだ。
アグネスが側にいてくれるなら、俺は良い方へ変わっていける。
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