この胸が痛むのは
「式の最終打ち合わせを、女官長として参りましたの」

「おひとりですか?
 ギルバートは?」

「式の後暫くお休みをいただきますでしょう?
 ギルバート様はお仕事を捌くのに、お忙しいのです」

忙しくても見送りくらいしてやれよ、と思う。
それで私で良ければと、エスコートを申し出た。

あまり話すことはないので、世間話の代わりに
流行りのドレスとは、等話題を振った。


「まぁ、どなたかにプレゼントなさるの?」

「プレゼントになるのかなぁ、単なるお礼かな」

「私でよろしければ、お見立て致しますわ、どなたに贈られるの?」

「アグネスの姉ですよ、クラリス・スローン侯爵令嬢です。
 以前パートナーとして出席して貰ったのに、何のお礼もしていなかったので」

「あぁ、記念夜会の、あの方ね?」

立ち止まったイライザ嬢が遠い目をする。
クラリスの姿を思い出そうとしているらしい。


「3年越しのお礼なのですね?」

「遅すぎて恥ずかしい話ですが、その通りです。
 いや、義姉上はお忙しいのに、お手をわずらわせるわけには」
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