この胸が痛むのは
結婚準備で多忙なイライザ嬢を使った、とギルに睨まれそうだ。
普段穏やかな第2王子は、怒ると怖い。
ここは何でも知ってるレイに相談するか。
やはり婚約者のリリアン嬢からクラリスに渡して貰うのが、最善かな。


「私、この前マダム・アローズのブティックで、とても素敵なドレスを見つけましたの。
 あれなら彼女にピッタリだわ! オーダーじゃなくてもいいんですのよね?」

そんなにピッタリじゃなくてもいいんだけど。
もちろん、オーダーじゃなくていいし、適当でいいんだよ。
見た目が良くて、高値で買取りして貰えそうなドレスなら。


以前、俺へのプレゼントを、考えるのが面倒で母親から勧められるまま、例のペンを購入した、と聞かされて。
身も蓋もない言われ方だと思ったが、その時のクラリスの気持ちが理解出来た。


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