この胸が痛むのは
「パッと見て、若い女性なら欲しくなる感じのドレスでしたか?」  

「もちろんです! とても美しいグラデーションなの!」

グラデーションが何なのか、よくわからないが。
情報をありがとう、じゃあ、そのアローズとやらに買いに行くかな、とガードナー侯爵家の馬車に乗せようとしたら。


「私これからアローズへ行く予定でしたの。
 殿下もお忙しいでしょう?」

義姉上と呼んだのがお気に召したのか、イライザ嬢の薄茶の瞳が輝いていた。
『家族になるんですもの、ご遠慮なさらないで』と、嬉しそうに言われ。
そこまで仰るならと、購入をお願いすることにした。


 
その『家族になるんですもの』は、俺に対してだと思っていた。
でも、彼女の方はそうじゃなかった。
クラリスに対して、だった。


それに気付いて俺も驚愕したが、目の前のイライザ嬢はもっと衝撃を受けていた。
彼女を庇うように、背中に婚約者を隠してギルバートが俺を指差す。


「イライザが悪いんじゃないぞ!
 お前の自業自得じゃないか!」

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