この胸が痛むのは
その眼差しに気付かない彼女は。 
俺に頼まれて『家族になるはず』のクラリスに、ドレスを選んで届けさせたと言い出した。
女性なら誰もが喜ぶ恋人の色のドレス。

友達だと誤魔化す、照れ屋な第3王子の名前で
カードを添えさせて貰いました。
簡単に、『愛を込めて』と一言だけ。


クラリスに紫色の素晴らしいグラデーションの
ドレスを。
それも勝手に『愛を込めて』なんてカードを添えて、勝手に侯爵家に届ける手配をしたと、聞かされたから。

今日の午前中に到着なので、もう受け取られているはず、そう締めくくる。
それを聞いた皆は、一瞬動きを止めた。
イライザ嬢がにっこり笑うと、無邪気な小動物みたいに見えた。
それで俺は、小動物を怯えさせないように。
出来る限り、感情を抑えた声で聞いたのだ。
『何で、ですか?』と。


「君は誤解しているみたいだね。
 アシュフォードが愛しているのは、友人であるクラリス嬢じゃなくてアグネス嬢だよ」

王太子の言葉にイライザ嬢の表情は固まり、やがて歪んだ。
そして、ギルバートは彼女を庇って……


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