この胸が痛むのは
『私はあなただけを愛しています』

何笑ってんだ、先生っぽくなかったか。


「もう一度、言ってください」

目をつぶったままのクラリスがねだる。
1回でいいと言ったろ!


「……私はあなただけを愛しています』

「もっと、ちゃんと言わないと」

いい加減にしろ、調子に乗るな。


「もう、やめた、言わない」

「もう一回だけ、トルラキアの愛してる、って素敵ですね。 うっとりします」

くそ、カードを人質に取られてなければ!


「あのなぁ、これで最後だからな?
『私はあなただけを愛しています』」

満足したようにクラリスが目を開けた。
目の前に居るのが俺で、残念みたいな顔するな。
お前が言わせたんだろ!
3回も言わされて、俺はぼろぼろだ。


「さあ、ドレスをお持ちしますわ」

さっぱりした顔でクラリスが笑う。
本当に俺はお前が嫌いだ。

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