この胸が痛むのは
急な帰宅か、出迎えられなかった家令が慌てて迎える。

そして、夫人はその場に立って居た俺を睨め付ける様に見た。


「これはこれは、アシュフォード殿下。
 今日はどちらをお尋ねくださいましたの?
 アグネスは学園ですから、クラリスの方かしら?
 私が留守だと御存じで、いらっしゃったのかしら?」



物凄く機嫌が悪い?
相手が王族だろうと関係ない、みたいな態度だ。
クラリスの事を言う、ってことは、食事会で何か聞かされて途中退席してきたか。


階段までドレスの箱を持ってきていたクラリスが慌てて踵を返して、部屋へ戻ったようだ。
今日はドレスの回収は無理か。 
せめてカードだけでも……


「お母様、お帰りなさいませ。
 殿下は私に会いに来てくださったのでしょう?」

部屋に戻ったクラリスと入れ替わる様に、そこに立っていたのは、今居ないはずの……
笑顔のアグネスだった。

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