この胸が痛むのは
それだったらドレスを新調しなくてもいいから、その分を私に頂戴、と言いたくなりました。
私の父は財務大臣であり、両親はその職務柄、子供が派手にお金を使うことを嫌っていました。
先に母に釘を刺されたので、きっと父は前借り等許してくださらない……

両親が駄目なら、後は貴族街のタウンハウスに住んでいる母方の祖母に頼むことしか、私には思い付きませんでした。
それで、母からドレスを見に行きましょう、と誘われたのに私は断ったのです。

『新しいドレスは要りません。
 今度の土曜日は、おばあ様の所に遊びに行きたいのです。
 おばあ様のご都合を聞いてください』と。


 ◇◇◇


母と一緒に帰宅した姉が何を言っているのか……私には直ぐには理解出来ませんでした。


「殿下には、私からのプレゼントとして、貴女が話していたペンをお渡しするわね」

「……」

「替えのインクカートリッジも、ほら、素敵にラッピングして貰ったの。
 これを貴女からのプレゼントにしたらいいと思って」


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