この胸が痛むのは
気候も言語も文化も異なるあの国へ、クラリスはひとりで向かう。
留学旅券は、最大2年。
2年の間に、ストロノーヴァ公爵家に近付くのは不可能だろう。
却って、バロウズの財務大臣令嬢のままの方が
機会はある。

クラリスが先生の出自を、知っていたのかは聞いていないが、頼まれていた調査書には記載している。
ストロノーヴァ先生はまだ結婚していない。
トルラキアの貴族は終身、つまり死亡するまで
当主であり続ける。
現公爵家当主は、先生の祖父だ。
この人が存命の間は好きにさせて貰っている感じだった。
だが父親のイオンが後を継げば、先生も誰かを
娶らされるだろう。
ストロノーヴァは王族に繋がる血筋だ。
諦めるのも、それでも追いかけるのも判断する
のはクラリスだ。
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