この胸が痛むのは
そして今日、このラニャンとの会談の前に王太子に言われたのだ。

「リヨンの王宮で、バロウズの根を張りたいのではない。
 とは言っても、王宮での発言権は確保しないとな?
 お前、出来るな? リヨン語は得意だったよな?
 にっこり笑って若輩者です、よろしくお願い致します、と腰を低くしてリヨンに入り込め。
 それと明日からはラニャン語を出発までに詰め込むんだ」


 ◇◇◇


午後から降り始めた雨は、夕方にやっと上がった。
執務室に戻ると、レイとカランが優雅にお茶を飲んでいた。
俺はラニャンが帰った後、外務大臣からリヨンの歴史とラニャンの王室人間関係を叩き込まれて、ふらふらになっていたのに、こいつらは……

「雨がひどいからさ、雨宿りに来たらアシュは居ないし……
 カランと久し振りにまったりしたよ」

レイは能天気そうに笑っているが、本当は全然能天気じゃない。
グレゴリーの横でのほほんとしながら、王城の中を歩き回り、かつて学園の恋愛相関図と生徒名鑑が入っていた、その頭の中は、今や王城内のドロドロ相関図と各家門の裏側を探る事でいっぱいだ。

コイツがリヨンに付いてきてくれたら、と思うが。
レイはもうすぐ結婚する身だ。
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