この胸が痛むのは
新婚の妻を置いて、一緒に来てくれとは言えない。
それにまだこれは、俺の口からは漏らせない話だ。


王太子に言われた期限は2年~3年。
アグネスの中等部時代を一緒に過ごせない。
正直、そんなに長く会えなくて、俺は我慢出来るか?

俺の表情が暗かったのか、カランとレイが心配そうに見ていた。
わかっている、受けるしか、喜んで行くしかない話だ。
本決まりになったら……
いや、明日言う。
彼女に跪き、デビュタントまでには必ず帰る、だから。

……そんな事より婚約はどうだろう。
そろそろ侯爵も、認めてくれるんじゃないか。
いや、でも明日、今までの事を告白したら愛想つかされて。
別れる方向に話は行くかもしれないし……

黙って、あれこれ考えて。
つい顔に出ていたのか、レイが気持ち悪そうに俺を……


執務室の扉が凄い勢いで叩かれた。
カランが立ち上がり、扉を開く。
何かの伝令か。
カランの耳元で囁くと、俺達に一礼をして、男は去った。

静かに扉を閉めたカランが俺に近付く。
何だか悪い報せのような気がした。

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