この胸が痛むのは
「誰にも言わないと誓って?」

何を?
何を誓えと?


「私はこの家を出るの。
 殿下は報酬として、その協力をさせられていただけ」

「報酬? 何の?」

「3年前、私が殿下のパートナーになったのは、殿下が困っていたから。
 それを助ける報酬を私は求めて、殿下は仕方なく受け入れたの」

姉は仕方なく、と強調して話しますが……
侯爵令嬢の要求に、仕方なく受け入れる王子なんて、信じられない。
姉が語る理由は本当の事なのでしょうか?


「家を出るなんて、本当なのですか?
 どちらへ行かれるおつもりなのです?」

「それは……」

姉は言いたくないようでした。
ここまでは何となく語れたけれど、家出なんて出任せだから、口ごもるのかしら。
自分でも姉を見る目が冷たいのはわかっていました。


パートナーになる報酬、家出の協力、それがどうしてドレスを贈ることに繋がるのでしょうか。


「貴女やプレストンに言わずに家を出ようとしたのは、追求されることを恐れたの。
 お父様はともかく、先代は貴女達が何かを知っていると気付けば、容赦なく追い詰める」
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