この胸が痛むのは
「あの人は自分が欲しい答えを得るまでは、その手を緩めない。
 貴女達は私と先代に挟まれて、心身ともにボロボロにされてしまうわ、だから……」


だから、私の為だから?


「教えていただけないと、何も信じることは出来ません。
 私へのご配慮は、要りません」


私は先代とはほとんど接した事はありませんでした。
お祖父様として会う時は、かけられる言葉は3つだけ。
「アグネスか」「最近は」「どうなんだ」その3つだけ。

私の答えがどうだろうと、聞いていないのか、
それとも元々興味がないのか。
そこから、会話が続くこともなく。
毎年の誕生日には品物ではなく、年齢に合わせたまとまった額のお金が父に届けられているようでした。
それで、少なくとも私の誕生日と年齢だけはご存知なのだと知ることが出来たのです。

先代に対しては、情もなければ、恐れもない。


「トルラキアに行こうと……ストロノーヴァ先生が。
 先生がずっと好きなの。
 高等部に進級して直ぐに告白したら、卒業してトルラキアへ来たら、考えますと、仰ったから」


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