この胸が痛むのは
姉から妹、また妹から姉と。
愛が移る殿下を、両親は王族から望まれて名誉だと受け入れるのでしょうか。
 
もう何も考えたくない。
いっそ、早く明日になればいい。
私は投げ槍になっていたのです。


 ◇◇◇


魔が差したというのでしょうか。
学園から帰宅し、母と姉が祖母のタウンハウスからまだ戻っていないと知り。
私はもう一度、あのドレスが見たくて。
明日に返品すると言っていて、その前にもう一度と。
自分の部屋にあのドレスを持ってきてしまったのでした。

それは本当に、紛れもなく美しいドレスでした。
これを見て、どうして姉は手離せるのでしょう。
本来なら目にしたくもないと、嫌っても良さそうなのに。
私はこのドレスに魅せられていました。


私より全然サイズが大きいし、返品すると言うから試しに袖を通すことも出来ないけれど。
それでも姿見の前で、自分の身体に当ててみたりして。
こんな素敵なドレスで、殿下にエスコートされて、一度は夜会に参加してみたかった。
くるりと回ると、ふわりと広がって。
綺麗な人達の中でも、このドレスならきっと一際綺麗に輝けた。

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