この胸が痛むのは
第48話 アシュフォードside
スローン侯爵夫人とクラリスの死を伝えられて、床にうずくまったままの俺の腕を取り、立ち上がらせたのはレイだった。
さっきとは違い、静かに次の、王太子からの伝令が来ていたらしい。
「俺は……行かないと、いけないから。
行けないと」
俺はアグネスに会いに行かないと、いけないから。
王太子には、会いに行けないと。
そうぼんやりとレイに返事をする。
安堵の次に、自己嫌悪に襲われて呆然としていたのだ。
クラリスが死んだのに。
アグネスじゃなかったことを喜んだ。
「行かないととか、行けないとか。
お前の気持ちなんて……
いいから! 王太子殿下に会って、何をすべきなのか聞いてこい!」
レイが投げつけるように俺に言った。
こんな風に言われたのは初めてだった。
あぁ、そうか、こいつは。
俺が神に感謝を捧げたのを聞いたんだ。
クラリスが死んだのに、
『ありがとうございます』と、感謝した……
俺の声を聞いたのだ。
レイは俺の腕をカランに預けて、執務室を出て行った。
「参りましょう、殿下。
マーシャル様は財務へ行かれたのだと思います。
スローン侯爵は下城されたでしょうけれど、何か情報がないか、尋ねに行かれたのだと思いますよ。
今のあの方の立場では、王太子殿下にお会いする殿下には付き添えません。
現場の人間に探りに行くしかないですからね」
そこまでカランに言われて。
レイが少しでも、情報を拾ってきてくれるのなら。
俺も。
さっきとは違い、静かに次の、王太子からの伝令が来ていたらしい。
「俺は……行かないと、いけないから。
行けないと」
俺はアグネスに会いに行かないと、いけないから。
王太子には、会いに行けないと。
そうぼんやりとレイに返事をする。
安堵の次に、自己嫌悪に襲われて呆然としていたのだ。
クラリスが死んだのに。
アグネスじゃなかったことを喜んだ。
「行かないととか、行けないとか。
お前の気持ちなんて……
いいから! 王太子殿下に会って、何をすべきなのか聞いてこい!」
レイが投げつけるように俺に言った。
こんな風に言われたのは初めてだった。
あぁ、そうか、こいつは。
俺が神に感謝を捧げたのを聞いたんだ。
クラリスが死んだのに、
『ありがとうございます』と、感謝した……
俺の声を聞いたのだ。
レイは俺の腕をカランに預けて、執務室を出て行った。
「参りましょう、殿下。
マーシャル様は財務へ行かれたのだと思います。
スローン侯爵は下城されたでしょうけれど、何か情報がないか、尋ねに行かれたのだと思いますよ。
今のあの方の立場では、王太子殿下にお会いする殿下には付き添えません。
現場の人間に探りに行くしかないですからね」
そこまでカランに言われて。
レイが少しでも、情報を拾ってきてくれるのなら。
俺も。