この胸が痛むのは
おっしゃられたように愚弄されていると殿下が
誤解されたのなら、それは何よりでございました。


貴方が姉に贈った想いのつまったドレス。
婚約披露の宴で装って欲しいと殿下が選び、
19歳の誕生日に贈られた紫色のグラデーションが見事なドレスです。
このドレスを身に付ける日をどれ程クラリスは
待ち望んだ事でしょう。

亡くなった日から何ひとつ持ち出されることの
無かった姉のワードローブから。
私は姉が1度も袖を通す事が出来なかったこの
ドレスを選び、この身に纏いました。


今日は姉の誕生日なのです。
クラリスが亡くなってからも殿下は毎年この日は我が侯爵家にいらっしゃって、姉の部屋でしばらく時を過ごされ。
それから、姉とふたりでよく散歩した温室をひとりで散策し、心落ち着かれると王城へと帰られるのです。

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