この胸が痛むのは
直ぐに通された執務室で、今まで調べた結果を
報告する。
既に戻ってきていた典医から、3人の遺体状況
は聞いていたらしい。


「……左に緩く曲がる坂に、上から続く馬の蹄とスローンの馬車の轍を見つけました。
 カーブは緩く、坂の斜度もそれ程無い。
 普通に走らせていたら、事故など起きそうも
ない箇所です。
 暗かったので松明の灯りで確認できたのは、
その轍の上を少し細い車輪の跡が走っていた事
です。
 関所に確認したところ、本日の雨が上がって
以降は1台も馬車は通過していない」

「そのもう1台を、お前はどう見る?」

「事故を知らずに普通に坂を下っているのなら、関所を通過するはず。
 事故を目撃したのなら、直ぐ届け出るはず。
 それを行わず、坂の途中で引き返している」

「……」

「スローンの馬車の跡を付け……これは恐らく、しつこく煽って走らせて。
 焦った侯爵家の御者が事故を起こすと、そのまま逃げた。
 犯人は貴族街に住む、誰かです」

「……今夜は家族だけで、と侯爵は言ったんだな?
 お前は行けるのか?」

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