この胸が痛むのは
それからお招きされた次の日曜日まで、何度か姉からはプレゼントの箱を押し付けられそうになりましたが、片意地と言われても、私は絶対に受け取りませんでした。

私は殿下の為にクッキーを焼いたのです。
子供らしい、お金のあまりかからないプレゼントですから、文句は言わせない。
王族は外部から持ち込まれた手作りの品など口にはしない。
そんな噂も知っています。
私が焼いたクッキーを殿下が召し上がられなくても構わない。

料理長に手解きを受けて、大半に彼の手が入ったクッキーを、侍女長に綺麗にラッピングして貰いました。

着ていくドレスやアクセサリー、ヘアスタイルも同じく侍女長と相談して決めました。

それを母はもう口出しすること無く、横目で見ていました。
寂しげに見えましたが、もう母には何も話さない。

……そんなかたくなな私の態度がウチの雰囲気を悪くさせて、母を悲しませている事はわかっていました。
けれど、以前のように母に色んな話を聞いて貰って、甘えるなんて、出来なかったのです。


こうした私と母の関係は、3年後に母が亡くなるまで、修復されることはありませんでした。
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