この胸が痛むのは
グレイシー伯爵夫妻に挟まれて座って居るのは
ゴージャス姉とバージニアの取り巻き妹。
今日はさすがにゴージャスにはしていない。
少し離れた席には、レイの婚約者リリアン・ロイズナー嬢と両親の伯爵夫妻。

それから、どうしてこんなに早く王都に来られたのか、わからない辺境伯夫人。
せっかくの申し出を却下した侯爵夫人のお悔やみに、わざわざ?
そんな母親から離れて座って居るのは、初恋を貫く男と、その最愛の人。
あの、ピタッとくっついてるのは多分座っていても手を繋いでいるのか。
……仲がいいのは結構だが、葬儀の場ではマナー違反だな、どうでもいいけど。

広い聖堂なのに、席はほぼ埋まっている。
後部には低位貴族達が座っているが、この辺りはあまり気にしなくてもいいかな。
大体の目星は付けているが、犯人とも、侯爵夫人やクラリスとも、接触があったと思えない。

俺は隣のバージニアに話しかけた。


「辺境伯夫人と、その息子が離れて座っているのが見える?」

声を潜めて囁くと、内緒の香りがするのか、妹の顔が輝く。
ネタになりそうだとこの場でそんな嬉しそうな顔をするな、王族なら。


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