この胸が痛むのは
そんな出来事もあってか。 
アシュフォード殿下には申し訳なかったのですが私のウキウキした気持ちはどこかへ行ってしまいました。

私が受け取らないので、姉はあのペンをプレゼントとして、持参していました。
薄いグリーンのドレスを着た姉のクラリスはとても綺麗で、さすがの殿下も心が動いてしまうかも知れません。

そう想像するだけでも面白くないのに。
殿下とランチをするメインのゲストは9歳の私のはずなのに。
付き添いの。
私の付き添いである姉のクラリスに、殿下付きの侍従は殿下に近い上席を勧めたのです。

子供は舐められる。

姉はそれを辞退して、私にそちらに座るように促したので、侍従は驚いたようでした。
殿下は私の事をちゃんと皆にお知らせしてくださっていなかったのでしょうか?

しばらくしてアシュフォード殿下がサンルームに入って来られました。
私とクラリスは席を立ち、腰を落として膝を折り、王族に対する最上級カーテシーを致しました。


「お待たせしました。
 本日はようこそ、お越しくださいました……あ?」

お決まりのご挨拶のご口上を述べられた途中で、私の隣に居るのが、姉のクラリスだとお気付きになったようです。 

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