この胸が痛むのは
「あの日はバージニア王女殿下のお茶会に招ばれて、会話の流れで姉から聞いた話を、殿下に致しました。
 あの有名な、アローズのドレスを贈られた人は誰なのでしょう、というそれだけの話です。
 私からは決してスローン様のお名前は出していません」

「では何故、王女殿下は貴女にクラリス・スローン侯爵令嬢がいい気になっている、と仰られたのです?」

「……それはお茶会に来ていた誰だったか覚えていませんが、誰かがクラリス様のお名前を出してきて、お誕生日が近いそうだ、とか。
 今度の夜会はアシュフォード殿下の婚約披露だと噂があると、言い出した様な気がします。 
 それからは格段に……王女殿下のご機嫌がすごく悪くなってしまって」


また、誰か、の話だ。
自分ではない、誰かが言ったかもしれない話。


「王女殿下から他に姉からは何も聞いていないか、と言われたので、薄紫色のカードを添えられるようだと話しました」

「それで、王女殿下は何と?」

「急に怒って皆の前で頬を叩かれました。
 そんな大事なことをわざと黙っていたのか、聞かれなければ話すつもりがなかったのか、となじられてしまって。
 お詫びしろと言われました」

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