この胸が痛むのは
「叩かれたのに、その上でお詫びしろと?」

「いい気になっているクラリス様に思い知らせてやれと。
 やり方は私に任せるからと。
 成功したら許してやると言われました」

お詫びと称して反抗出来ない伯爵令嬢に、そんな言いがかりとしか言えない理不尽な要求を、バージニアは押し付けたのか。


「ずっとずっと嫌でした。
 父からは絶対に王女殿下に逆らうな、と言われていて、本当は逃げ出したかった。
 先に中等部に進級して校舎も分かれて、1年間は楽しかったのに、また殿下と同じになって、これが一生続くのかと思って、父には留学か外国へお嫁に出して、と頼んでいたのに」

辛いのは本人が一番だが、聞かされた俺も、法務官も気分は最悪だった。


「どうやって思い知らせたらいいのかもわからなくて、本当はそんな事はしたくないし、姉に相談しようかと馬車で帰る途中、お菓子屋の前で
スローン家の馬車が停まっているのが見えて、
侍女が気付いて教えてくれたのです。
 あの馬車は侯爵家のご子息やご令嬢が主に使用している馬車ですよ、って。
 あの日は中等部はお休みでしたが、高等部と初等部は授業があったので、プレストン様やアグネス様ではないのがわかったのですが、まさか侯爵夫人もお乗りになっているとは知りませんでした。
 護衛が付いていなかったからです」

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