この胸が痛むのは
だから、その後殿下がマーシャル様と邸に来てくださって。
私の前に跪いて手を握ってくれて。


「直ぐに来れなくて、ごめん……」 

「……父と兄から聞いていましたから。
 姉の側に居てくださっていたんでしょう。
 私はここで待っていただけですもの」

「色々調べる事があってね。
 今夜は君の側に居たいんだ」
 

私の側に?
そんなに優しくしないで欲しい。
どうして、組み紐を結んでいるの?
殿下は知らないの、昨夜私が何をしたか。
こんな事になったのは、私のせいなの。


 ◇◇◇


「びっくりしたよ、あれさ、君。
 アシュフォード殿下と、仲いいんだ?」

調理場に行って、お水を貰っていた私の後を追いかけて声をかけてきたのは、従兄のケネスでした。
ケネスは私より3歳年上で、中等部の3年生です。
幼い頃はそれなりに遊んだりはしていましたが、この5年程は彼はうちには遊びに来なくなっていましたし、私達が叔父の邸に行っても、会うこともなかったので、本当に言葉を交わすのは久しぶりでした。

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