この胸が痛むのは
喉の奥が熱くなって、塊が上がってきて、目の奥が痛くて、このままでは……何か話そうとしたら。
『泣いてしまう』そう思って、仕方がないので
笑いました。


「アグネス、そろそろ……」

やっと、ケネスが来てくれました。
肘を支えてくれた彼が誰もいない部屋へ連れて
行ってくれました。


「落ち着いたら、出てこいよ」

ひとりにして貰えて、私は泣きました。


 ◇◇◇


葬儀開始の1時間前に、先代は教会に到着されました。
侯爵邸に寄る時間がなく、教会の控えの間に入られて喪服に着替えるのを余儀なくさせられた事に大変ご立腹されていて、私達を呼びつけました。
私達の後ろから騎士隊長が付いてきて一緒に部屋に入ってきましたが、単なる護衛だと先代は彼の事は気にしていない様でした。


「どうしてもっと早くに連絡せんのだ!
 行方がわからなくなっていたなら、その時点で早馬を出すべきだろう!
 死んでから連絡してくるとはな?
 ゲイルも惚けたな、暇を取らせろ!」

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