この胸が痛むのは
癇癪を起こした私を『やり直せばいいよ』と、姉は抱き締めてくれたのに、突き飛ばして、泣いた事を思い出しました。
『捨ててよ!』と、メイドの誰に叫んだのかは思い出せないけれど。


亡くなったのだと、報せが来るまで。
気持ちを落ち着かせようと、新しくハンカチに刺繍を始めていました。
本当は嫌でした。
『お帰りになられたら渡しましょう』と、祖母に勧められたのです。
こんな事をすればする程、本当は無事に帰ってこないのだと思い知らされる気がして。


刺しかけた新しいハンカチを完成させて、古いハンカチと一緒に、お母様の棺に入れてあげましょう。
そうすれば、きっとお母様は安らかに眠れるから。


本当に? 本当に母は、姉は。
安らかに眠れるの?
私は? 私はこの罪を抱えて。
この先も生きていくの?


自分が仕出かしてしまった事の大きさを思うと、息苦しくて汗が出て。
それなのに指先は冷えて行くようで。
立っているのが辛くなってきていました。


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