この胸が痛むのは
母と姉と、その翌日の御者の葬儀を終えて。
邸には悲しみに慣れてしまった静けさがずっと覆っていました。
この家の明るさを支えていたのは母と姉だった、と改めて思い知らされて。
使用人の誰もが音を立てずに、各自の仕事をこなしていました。


アシュフォード殿下とは葬儀以来、お会いしていませんでした。
お忙しくされているのか、こちらにいらっしゃることもなく、2度ほどお花と手紙を送って下さいました。

『無理をしないで』
『もう少しだけ待ってて』
『今は少し忙しくしているけれど、直ぐに会いに行くから』
『今度は全部話すから』 

そんなお手紙を届けられて……


全部話すおつもりなら、次に会うのが最後になるのかも、と思い。
ずっと殿下がお忙しければいいのに、と思ってしまうのでした。


『疲れているけれど、君がいるから勇気を貰える』

そんな言葉が綴られていても。
封筒は、あの薄い紫色をしていて。

……この世で一番、嫌いな色になりそうでした。

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