この胸が痛むのは
第59話
徐々に日常が帰ってきていて、母と姉の不在が
少しだけ当たり前になり始めた頃。
兄は学園に戻りましたが、私が休みたいと言うと父は許してくれました。
そんなある日しばらく休みを取っていた父が、
王太子殿下に呼ばれて登城されました。
さすがに仕事に戻るようにと仰せだったのでしょうか。
帰宅した父は少し怒っているように見えました。
私は父の執務室に呼ばれました。
「アシュフォード殿下からクラリスに贈られたというドレスを知っているか?」
「……」
「クラリスの部屋を確認させたが、無かった。
お前は知らないか?」
姉の部屋に返すのを忘れていた!
自分の迂闊さを悔いても、もう遅くて。
「皆に聞けば、あれは殿下からお前への秘密の贈り物で、代わりに受け取ったのだとクラリスが言っていたそうだ。
クラリスがお前の気付かぬ内に、お前の部屋に置いたのかも知れん。
間違いなので、返却して欲しい、と王太子殿下が仰せだ」
レニーが呼ばれて、私の部屋からあのドレスを持ってくるように、父が命じて。
このまま、姉が部屋に置いた事になるのなら。
狡い私はそう思いました。
姉の部屋に勝手に入り、持ち出したことを知られずに済むのなら、余計な事は言わない。
黙っていようと決めました。
少しだけ当たり前になり始めた頃。
兄は学園に戻りましたが、私が休みたいと言うと父は許してくれました。
そんなある日しばらく休みを取っていた父が、
王太子殿下に呼ばれて登城されました。
さすがに仕事に戻るようにと仰せだったのでしょうか。
帰宅した父は少し怒っているように見えました。
私は父の執務室に呼ばれました。
「アシュフォード殿下からクラリスに贈られたというドレスを知っているか?」
「……」
「クラリスの部屋を確認させたが、無かった。
お前は知らないか?」
姉の部屋に返すのを忘れていた!
自分の迂闊さを悔いても、もう遅くて。
「皆に聞けば、あれは殿下からお前への秘密の贈り物で、代わりに受け取ったのだとクラリスが言っていたそうだ。
クラリスがお前の気付かぬ内に、お前の部屋に置いたのかも知れん。
間違いなので、返却して欲しい、と王太子殿下が仰せだ」
レニーが呼ばれて、私の部屋からあのドレスを持ってくるように、父が命じて。
このまま、姉が部屋に置いた事になるのなら。
狡い私はそう思いました。
姉の部屋に勝手に入り、持ち出したことを知られずに済むのなら、余計な事は言わない。
黙っていようと決めました。