この胸が痛むのは
ですが、私は混乱していました。
使用人の皆には私への贈り物だったと姉が言っていた?
私には、姉はあれは間違いでアローズに返品する、と言っていました。
本当はどちらなの?
殿下に確認してもいいの?


…もう、クラリスはいない。
もしも私が聞いた温室での告白も、ドレスと同じ様に何かの間違いだと、殿下が仰ってくれたら。
あの姉に宛てたカードは、見なかったことにして。

都合の悪い事は全部、全部忘れることにしてしまえばいい……
愚かな私の心は、諦めると諦めないが交互に占められて。


そんな中、アローズの箱を抱えて戻ってくるはずだったレニーは何も手にしていませんでした。


「アグネスお嬢様のお部屋にも、ございませんでした」


私の部屋に無いとはどういう事なのか、わかりませんでした。
ドレスの存在自体を忘れていたので、意識していなかったのです。
いつ箱ごとドレスが消えたのでしょうか?


メイドやその他の使用人達が盗むとは考えられませんでした。
皆、身元が確かな者達で、ドレス1枚で将来を潰すとは思えません。
私は姉の部屋に戻していないし、現に先に探したのに無かったのです。

あの、殿下の瞳の色をしたドレスは、私の部屋から何処にいったのでしょうか……
その時の私には、その行方は想像さえ出来ませんでした。


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