この胸が痛むのは
そして兄も。
お世話になったと、言いながら。
父がそうするからと、殿下を騙そうとしてる。
父にドレスを持っていると自分からは言わないようですし、多分、殿下に『見つかりません』と、返信するのでしょう。
スローンはひとつ、なら私も。
あのドレスは知らない事にしないといけません。


二人とも、どうしてしまったのかしら? 
王家に対して、何か思うところがあるのでしょうか。


「王立騎士団がうちにやってくるかも……」

「それはないね、父上だって、王太子殿下が大きく出られないとわかってて、そうなさっている」

兄は何を言ってるの? お相手は王家よ、王太子殿下なのに。


「おかしいのは殿下って、そのドレスの箱が何色だとか、ドレスもどんなのだとか、わかってないんだよ」

「……」

「何色の箱かわからないけど、アローズのドレスだから、って書いててさ、ご自分で用意したんじゃないなとか、アローズ自体知らなくて、今まで女性に何か贈り物をした事が無いのがわかる、と言うか」

< 365 / 722 >

この作品をシェア

pagetop