この胸が痛むのは
それでも、許されない事でした。
胸が痛くなり、浅い息を何度も繰り返して。

姉を呪い、母を巻き込んでしまったと、ここで父に話してみたら?
打ち明けて楽になりたい誘惑と、話したことで父からはどんな目で見られるのかの恐怖と。

『言った言葉は戻らない』

先代が仰っていた通り。
殿下にも、父にも。
今は話せないけれど、いつか、いつか……。
思い出しても、楽に息が出来るようになれば……


 ◇◇◇


「2ヶ月後にリヨンへ行くことになった。
 3年以内には戻れると思うんだ。
 前に船が遭難して行方不明になった第2王女がいただろう?
 あの方が実は生きていてね。
 王太子を倒して、王位後継の王太女になられたんだ」


2ヶ月後に行われる御祝いに、王太子殿下の名代として参加されて、そのままリヨンに残られ、
王太女殿下のお手伝いをするのだと仰せになりました。
バロウズの使節団には、マーシャル様や侍従の方も含まれていて、あの方達も殿下とご一緒に残られるそうです。


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