この胸が痛むのは
遊んでる割には女性達から悪い噂が流れないのは綺麗に付き合って、後腐れなく別れるのが上手なのか。
彼を使って、シモーヌ公爵家と繋がりを持て、か。

公女マルグリットが純真か、そうでないかは知らないが。
まだ17歳の彼女に、海千山千のライナスを宛がおうとするなんて、前言撤回だ。
彼に簡単に喰われてしまうだろう。
……うちの王太子に、人間味は余り無い。


アグネスとの婚約は簡単にはいかないだろう。
明日、侯爵へは誠心誠意で、謝罪するしかない。
夫人とクラリスがあんな目に遭ったのは、俺とバージニアのせいなのだから。


「リヨンに連れて行く人間も、今週中には決定する。
 3年は長いからな、お前の希望は叶えよう」


リヨンに連れて行きたい、か。
自分の執務室に戻る俺に、王太子が言った。


 ◇◇◇


「リヨンに行くって話だけど。
 俺、その中に入ってるよね?」

「……」

「え、その沈黙はどう言う事なの、入ってないの?」


夕方、執務室にレイがやって来た。
正式にはまだだが、もう情報が回ってきたか。
ライナスが1ヶ月かけて身辺整理を始めたか。


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